Mechanical Turk事情
Amazonは2005年からMechanical Turkというクラウドソーシングサービスを提供している。ネット上の誰かに仕事を頼むための仕組みで、Mechanical Turkは世界初の大規模なクラウドソーシングサービスである。Mechanical Turkの存在は有名になったものの、米国に銀行口座を持っていないと仕事を依頼できないため、日本で実際に利用したことがある人は少ないと思われるが、実際にクラウド上で様々な仕事が依頼されたり請け負ったりされているということは画期的である。
クラウドソーシングサービスを様々なシステムのユーザインタフェースに利用しようという研究が米国では最近流行しているようである。ユーザテストに利用するというのが最も手軽な例であるが、コンピュータと同じような機能をネット上の誰かに依頼してしまうという試みも盛んになっている。たとえばMITで開発されたSoylentというシステムでは、Wordの編集メニューに「段落を短くまとめる」のような項目が追加されており、ユーザがこれを選択するとTurkitというライブラリを利用してMechanical Turkへの発注が自動的に行なわれ、世界の誰かが段落を短くまとめてくれるようになっている。
クラウドソーシングの活用に関する研究や論文は近年かなり増えており、最近のユーザインタフェース系の学会では必ずクラウドソーシングのセッションがある。コンピュータに対する指示とクラウドソーシングの発注が同じレベルで実行できるというのは実に面白いことであるが、世界の誰かを安い金でコキ使っている印象もある。Mechanical Turkの仕事を自分で実際に試してみたことがあるのだ、日本に関連した文章の説明が適切かどうかを英語で答えるという結構大変な仕事をみっちり1時間作業した結果、報酬$1.80をいただくことができた。先進国の人間でこんな金額で仕事をする人は少ないだろうから、Soylentのような仕事を請け負うのは発展途上国の人間しかいないだろう。こういうシステムを作ったり使ったりすることには疑問を感じてしまう。
とはいうものの、日本語が得意でかつ激安の給料で働いてくれる人間が大量にいるような国が世界のどこかに存在したとすれば、そういう人達にいろんな雑用を発注したくなることは間違いない。英語が得意でかつ激安の給料で働いてくれる人間は世界に大量に存在するだろうから、アメリカ人にとってはそういう人々をクラウドソーシングという名目で搾取することが気にならないのかもしれない。世界の誰もが得をするような形でクラウドソーシングサービスが発展してほしいものだと思う。
という話を2015年のスマホに満足してますか?に書いたのだが、2017年には日本からでも発注が可能になったそうである。そのあたりの事情やコツについて実践 Amazon Mechanical Turkという資料が公開されていて大変興味深いのだが、やはり積極的に利用しようという気には今のところなっていない。
ていうかMechanical Turkを発注した人をまだひとりも知らない...
#ブログ #Mechanical_Turk 2018/4/11