ソフトウェア科学会 基礎研究賞講演
「ユニバーサルなユーザインタフェース」
増井俊之
慶應義塾大学
2021 9/3
自己紹介
シャープ、ソニー、産総研などに勤務
ケータイの予測変換(POBox)などを開発
2008秋まで米国Appleに勤務
フリック入力を開発
2009より慶應義塾大学
Nota Inc. CTO
ユーザインタフェースの研究開発
仕事風景 @ Apple (2007)
活動
ユーザインタフェースの研究開発
各種Webサービス運用中
Gyazo (画面キャプチャ+アップロード)
Scrapbox (Wiki)
Helpfeel (ヘルプシステム)
本棚.org (書籍管理)
EpisoPass (パスワード管理)
スマホに満足してますか? - ユーザインタフェースの心理学
煽り
Software Design誌
増井情報の検索
ユーザインタフェースシステムのトレンド
モバイル
ユビキタス
ユニバーサル
ユニバーサルデザイン
誰でも使えるシステムのデザイン
障害者用システムではない
例
SUICA
自動ドア
段差の無い家
誰がコンピュータを使っているのか?
昔: 専門家
現在: 一般人
将来: 弱者を含むあらゆる人々
人間の弱点を補強するシステムが増えている
計算機による弱点補強
計算のサポート
記憶のサポート
入力/編集のサポート
コミュニケーションのサポート
検索のサポート
“Augmented human”
最近流行のキーワード
学会もできた
人を助ける技術
服
メガネ
自動車
文房具
人助け産業
服はすごい産業
メガネはすごい産業
自動車はすごい産業
文房具はすごい産業
ユニバーサルデザインは商売になる!
ユニバーサルなシステム開発例
入力支援 (POBox)
思考支援 (Scrapbox)
検索支援 (Helpfeel)
コンテンツ閲覧 (Serencast)
パスワード管理 (EpisoPass)
昔話
8008マイコン (1976)
Intel 8008 CPU
スイッチでプログラムを書いていた
キーボードもアセンブラも無い
ユニバーサルではない!
8008マイコン
8008マイコン
紙テープリーダ
ゲームのコード
I/O 記事 (1978)
1990ごろのの増井の開発環境
NeXTStation
ビットマップディスプレイ+マウス
NeXTstep
BSD Unix + GUI
Interface Builder
Objective-C
PostScript描画
伝説のデモ (1968)
Douglas Engelbart
Xerox PARC
Alto (1973)
Xerox PARCで開発
Xerox Star (1981)
Lisa (1983)
AppleのGUIパソコン
Lisa (1983)
Macintosh (1984)
NeXT Computer
1985創業 by Steve Jobs
現在のMacOSの原型
NeXTStep
新しいインタフェースの発明/普及例
GUI
ここ40年ぐらい本質的には何も変っていない!?
VR / AR
Web
これまでのインタフェースシステム
開発者が自分たちのために作ったもの
万人向けに調整
美術館に行ったら絵の具を買わされたような
現状に慣れすぎ?
最近の人は現在のインタフェースに満足しがち?
もっとヘンなものを考えるべき
ユーザインタフェースの研究とは
昔はあまり盛んではなかった
WISSを立ち上げた (1993)
ユーザインタフェース研究とユニバーサルデザイン
誰もが使う
体が不自由でも使える
頭が不自由でも使える
モバイルコンピューティング
両手が使えない
机が使えない
画面が小さい
ネットが遅い
⇒ 制約が多いとかえって工夫が可能
制約発想
長屋発想
貧弱な環境でも使える
泥酔思考
思考力が弱っていても使える
長屋コンピューティング
我慢して住めるか?
これならどうか?
Wifi完備
障子がスクリーン
神棚にサーバ
あちこちのセンサでKB入力
自動冷暖房
電子書籍
コンビニで冷蔵庫不要
良いレストランがいくらでも
近所にスーパー銭湯
例: 置くだけシステム
CDを置くとその場所で音が鳴る
MouseField
実世界GUI
例: POBox
Gyaim
Slime
POBox
予測インタフェース+検索インタフェース+デザイン
「フリック」入力
キーひとつだけで文字入力可能
例: Serencast
ボタンふたつだけでコンテンツ閲覧
例: EpisoPass
すでに知ってる記憶からパスワード生成
例: Helpfeel
漠然としたキーワードからデータを取得
活用事例
増井のHelpfeel
例: Scrapbox
モダンなWiki
芋蔓情報整理
誰でも整理/発想できるようになる
将来展望
みんなのための計算機をめざす
計算機科学をユニバーサルデザインに生かす